2015年05月22日

MacBook との相性も最高!Elementary OS Freya レビュー(ギズモード風)

前回 DELL XPS 13 へインストールした Elementary OS - Freya の完成度、満足度が想像以上に高かったので、思い切って母艦(MacBook Pro Retina 15 インチ・モデル)も乗り換えることにしました。 そして、ちょうど1ヶ月ほど本格的に使ってみたのでギズモード・ジャパン海外記事翻訳風(←何故?)にレポートしますよ。

GIZBUFFALO

Eementary OS ってどんな OS?


Elementary OS は一般的には「Mac OS に似ている」という文脈(コンテクスト)で表現されることが多い Ubuntu をベースにした Linux ディストリビューションです。 でも、僕自身は Mac OS に似ているとはさほど感じていません。 メニュー、アイコンなどのデザインやデスクトップ設計において Mac OS の良い所を取り入れているのは事実ですが、他の OS も含めて参考にしているうちの1つ、という程度だと思ってます。 では何が素晴らしいか。 余計なパッケージがインストールされていないシンプルなところ、それに、Vala オブジェクト指向言語と GTK3 を使いスクラッチで書き上げられたデザイン性の高い Pantheon デスクトップ・シェル(環境)が最も大きな魅力だと感じています。

もちろん納得できないところもあります。 それは一言でいえば「ユーザーによる変更を制限している」きらいがあるところです。 Elementary OS はシンプルで一貫性のある美しいインターフェースを用意しますが、同時に用意したレール上を走ることをユーザーへ要求しているように感じます。 パッケージングされたターミナル、ファイル・マネージャーなど標準ソフトウェアの設定メニューは無いに等しいです。


MacBook Pro Retina(MGXA2JA)へ Elementary OS をインストール


はっきり言って最初から不安にさせてくれました。 ドキドキしながらブータブル USB ディスクを用意して、option キーと組み合わせて電源ボタンを押すと、表示スケールの崩壊したインストーラーが僕の目の前の現れたからです。 最初が肝心と言いますが、まさにその通り。 このような現象は僕の使う MacBook Pro Retina 15 インチ・モデルで十分なテスト、品質管理が行われていない可能性を示唆しているからです。

run elementary os freya installer on macbook pro


しかし、同時に希望もありました。 Elementary OS は Broadcom 無線 LAN チップのドライバを含んでいます。 このドライバはプロプライエタリなテクノロジーが含まれており、普通インストーラーからは除外されています。 このドライバが含まれているということは Apple デバイスでの利用を強く意識している、ともいえます。

結局僕は、不安を感じながらも MacBook に有線 LAN アダプタ(USB)を繋げ、 Tab > Enter と続けてキーを入力して崩壊したスタート画面をパス(見えませんが、このキー操作でライブ・モードを選択したことになります)して一度ライブ・デスクトップを起動してからインストールすることにしました(有線 LAN アダプタを使ったのは崩壊したデスクトップで Wi-Fi セットアップ・ダイアログを表示・操作したくなかったからです)。

ElemntaryOS Live mode


素晴らしいです! Elementary OS は僕のディスプレイが High DPI(2880x1800)であることを認識しつつ、メニューやフォントは2倍(1440x900 相当)にスケーリングしてくれています(レティナの美しさはそのままです)。 Ubuntu MATE ではレティナ(2880x1800)の広大なデスクトップをエンジョイしましたが、今ではこのぐらいがベストな実効解像度だと思ってます。

インストール方法の詳しい説明は「Enjoy Simplicity - Elementary OS(Freya)のシンプルな心地よさ」を見て下さい。


MacBook Pro へ Elementary OS をインストールしたら必ず行うこと


MATE でもそうでしたが標準では F キーがディスプレイの照度やスピーカーの音量調整に直接マッピングされていて純粋に F キーを使うには fn キーとの組み合わせが必要になっています。 これは不便なのでターミナルを起動して、テキスト・エディタで /etc/modprobe.d/hid-apple.conf ファイルを作成・全く反対の動作にします(vi が苦手な人は scratch-text-editor を使って下さい)。
 
$ sudo vi /etc/modprobe.d/hid-apple.conf
options hid-apple fnmode=2


この設定を反映するために update-initramfs と OS の再起動が必要です。

$ sudo update-initramfs -u


もう1つ、タッチパッドの調整という重要な作業もあります。 これは「MacBook Pro Retina モデルでUbuntu(MATE)を楽しむ方法」が詳しいのですが、50-synaptics.conf を作ります。

今現在、僕の 50-synaptics.conf はこんな感じになってます。

Section "InputClass"
        Identifier "touchpad catchall"
        Driver "synaptics"
        MatchIsTouchpad "on"
        MatchDevicePath "/dev/input/event*"
        Option "PalmDetect"            "0"
        Option "PalmMinWidth"          "10"
        Option "PalmMinZ"              "200"
        Option "TapButton2"            "3" # two-finger tap
        Option "TapButton3"            "0" # three-finger tap
        Option "VertScrollDelta"       "-110"
        Option "HorizScrollDelta"      "-90"
        Option "HorizTwoFingerScroll"  "1"
        Option "FingerLow"             "10"
        Option "FingerHigh"            "85"
        Option "FingerPress"           "255"
        Option "MinSpeed"              "0.8"
        Option "MaxSpeed"              "1.2"
        Option "AccelFactor"           "0.012"
        Option  "MaxTapTime"           "220"
        Option  "MaxDoubleTapTime"     "180"
        Option  "MaxTapMove"           "100"
        Option "HorizHysteresis"       "75"
        Option "VertHysteresis"        "75"
        Option "AreaLeftEdge"          "-4720" # x-min: 4750
        Option "AreaRightEdge"         "4300" # x-max: 5280
        Option "SHMConfig"             "on"
        Option "VertResolution" "70"
        Option "HorizResolution" "45"
EndSection


最後に日本語入力環境(fcitx/mozc)を設定すればおしまいです。


Elementary OS デスクトップ環境、アプリケーションのチューニング


ここでは、みなさんに幾つかのチューニングをご紹介しようと思います。 Elementary OS のファイル・マネージャー(pantheon-files)はシングル・クリックでダブル・クリック相当の動きをするのですが、僕はこの機能に違和感を感じたので elementary-tweaks をインストールし、

$ sudo add-apt-repository ppa:mpstark/elementary-tweaks-daily
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install elementary-tweaks


System Settings > Tweaks > Files と進み Single Click のスイッチをオフにしました。

pantheon-files single click - off


また、僕は日本語入力に fcitx/mozc を使っていて、デスクトップ上部のパネル(これは正式には WingPanel と言います)にあるインジケーターに mozc アイコンが表示されるのですが、パネルの厚み 24 ピクセルに対して mozc アイコンは 32 ピクセルなので日本語入力がアクティブになる度に WingPanel がペコペコして”クソダセー”って振る舞いなります。

pantheon-files single click - off


/usr/share/fcitx/mozc/icon/mozc.png を画像エディタ(例えば GIMP)で開き、24 ピクセルにリサイズしておきましょう。

皆さんはターミナル(端末)を使いますか? 僕はデスクトップで活動している時間の 30 % はターミナルを使って何かの作業していると言っても過言では無いほど頻繁に使っています。 Elementary OS には pantheon-terminal が用意されていて、こいつもなかなか面白いです。 Control + v キーでクリップ・ボードを直接ターミナルに貼り付けることができ、sudo 付きだと警告ダイアログまで表示してくれます。

pantheon-files single click - off


ターミナル・マルチプレクサ(tmux)を使う僕にとってタブ・メニューを強制されるってのは余計ですが、シンプルで楽しいです。 少し真面目に触ってみると Control + d にバグ?があることに気が付きました。 このキーを入力したとき、カーソル上にキャラクターがあれば delete して欲しいのですが pantheon-terminal はいきなり終了(ログアウト)してしまうんです。

pantheon-files single click - off


Bash 使いの僕は「クソッタレ!」と叫び、”てめえは金輪際ゼッテー使わねえ!”と短絡的に考えたのですが少し調べると次のコマンドを打ち込めばこの問題をとりあえず回避できることに気が付きました。

$ gsettings set org.pantheon.terminal.settings save-exited-tabs false


でも結局、pantheon-terminal ではなく使い慣れた xfce4-terminal に戻ることにしたんです。 え、なぜかって? よく考えると Control + v は vim の矩(く)形選択で使うショートカットであることに気がついたからです(ええ、僕は Vimmer です)。

pantheon-files single click - off


矩形選択で使うキーの組み合わせをスワップするほど pantheon-terminal に義理も愛情も無いですからね。

あと最後に Control + Alt + Backspace キーで X サーバーを殺せる(kill できる)ように設定しておくことをおすすめします。 System Settings > Keyboard > Options と進み、Key sequence to kill the X server から有効にできます。

ElementaryOS keyboard option


こうしておけば、万が一 pantheon デスクトップ・シェルが崩壊したときにはキーボードを使ってディスプレイ・マネージャ(LightDM)、つまりログイン・ページに戻ることができます。


僕が Elementary OS で愛用しているアプリケーション


僕は”テクノロジー”に分類される人間ですが、ここでは誰にでも役に立つ Elemntary OS と相性の良いアプリケーションを幾つか紹介しようと思います。

まず、ブラウザはなんてったって Firefox が一番です。 Chrome は GTK テーマが"おえー"って感じのダサさですし、Chromium はインストールしてはおくべきですが、それでもタッチパッド操作したときの反応・滑らかさは Firefox がサイコーです。 Firefox に1つだけ注文をつけるとしたら、バージョン 38 で実装された Better High DPI support は全然嬉しくなかったです(”クソ”だと思いました)。 これはシステムのスケール・ファクター(MacBook Pro Retina の場合、Pantheon シェルは 2880x1800 を実行解像度 1440x900 で表示するのでこの値は 2 になります)に応じてメニュー、フォントを拡大して表示するという機能ですが、メニューまで 2 倍表示されると余計なスペースは使うわ、アイコンは滲むわでサイアク、”うげー”って感じでした。

Firefox layout.css.devPixelsPerPx is auto


それで URL に about:config と入力し、layout.css.devPixelsPerPx を 1.0 に設定することでこのオート・スケーリングをオフにして使ってます(Web ページのフォントは Retina 解像度で細かくなり過ぎますが Firefox であれば Default FullZoom Level アドオンを追加・設定すれば問題無いです)。

Firefox layout.css.devPixelsPerPx is 1.0


もし、chromium, chrome でスケール・ファクターを変更したいのであれば起動時の引数(chromium-browser -high-dpi-support=1 -force-device-scale-factor=2)で指定して下さい。

ちなみに Elementary OS デフォルトのブラウザは Midori なんですが、System Settings > Applications で デフォルトのブラウザを切り替えることができます。

Applications


ところで、みなさんは音楽を聞きながら仕事をしますか? 僕は熱心に楽曲を購入するほどではありませんが、Radio Tray でジャズやテクノを聞いています。

Radio Tray のインストールはこうです(ソフトウェア・センターでも見つかります)。

$ sudo apt-get install radiotray


ただ、このままでは動きません。 エディタで /usr/lib/python2.7/dist-packages/radiotray/SysTray.py を編集し、

$ sudo vi /usr/lib/python2.7/dist-packages/radiotray/SysTray.py


185 行目付近にある gtk.gdk.threads_init() をコメント・アウトします。

184     def run(self):
185#         gtk.gdk.threads_init()
186         gtk.main()


この後 System Settings > Applications > Startup か gnome-session-properties を使ってログインしたとき自動起動するよう登録しておけばデスクトップ上のインジケーターからラジオを聞けるようになります。

RadioTray


チーム内でのコミュニケーションには Slack を使っていますが、そのクライアントには ScudCloud がお勧めです。 次の手順でリポジトリを追加してから scudcloud をインストールしてみて下さい。

$ sudo apt-add-repository -y ppa:rael-gc/scudcloud
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install scudcloud


少なくとも今のところ僕のラップトップでカンペキに動いています。

ScudCloud


え、オフィス・スイート? ・・・これは難しい質問ですね。 僕個人の感覚でいえば、Libre Office は巨大・複雑・重いわりに MS オフィスの再現性はフツー(複雑なものは再現できない)ってとこです。 また、Elementary OS デスクトップとの相性を中心に考えると GNOME 標準のオフィス・スイート(AbiWord や Gnumeric)ってことになりますが、あいつらは今ひとつ頼りないです・・・。 それで結局のところ、今は WPS Office を使ってます。 日本語言語パックを追加すると広告がタブ表示されるので「うぜー」って思いますが、まあ我慢できる程度です。

素の WPS office はインプット・メソッドを認識してくれないので /usr/bin 下にある wps, wpp, et をエディタで開き、3つの環境変数を追加しておきましょう。 これで fcitx を使って日本語入力ができるようになります。
 
$ sudo vi /usr/bin/wps
#!/bin/bash

# Input Method
XMODIFIERS=@im=fcitx
QT4_IM_MODULE=fcitx
GTK_IM_MODULE=fcitx

gOpt=
#gOptExt=-multiply
gTemplateExt=("wpt" "dot" "dotx")
gBinPath=$(dirname "$0")
...


Podcast 好きには Vocal を推薦します。

vocal_055


僕はラップトップでビデオは見ないのですが(見るなら Nexus Player か Apple TV を使います)、Vocal は必要十分な Podcast クライアントです。

vocal_054


あと、細かい話ですが、もし、Dropbox を使っていて WingPanel のインジケーター上に Dropbox を表示したいとしたら ~/.config/autostart/dropbox.desktop ファイルを編集して XDG_CURRENT_DESKTOP 環境変数を Unity にする必要があります(XDG_CURRENT_DESKTOP の値はグローバルには Pantheon なのですが Dropbox はこのコンテクストに対するアクションが実装されていません)。

[Desktop Entry]
Name=Dropbox
GenericName=File Synchronizer
Comment=Sync your files across computers and to the web
#Exec=dropbox start -i
Exec=env XDG_CURRENT_DESKTOP=Unity dropbox start -i
Terminal=false
Type=Application
Icon=dropbox
Categories=Network;FileTransfer;
StartupNotify=false


最後にこれを /usr/share/applications/dropbox.desktop として上書きコピーします。

$ sudo cp ~/.config/autostart/dropbox.desktop /usr/share/applications/dropbox.desktop

すると、インジケーターに Dropbox が追加されます。

ElementaryOS dropbox indicator


Elementary OS(Freya)は使うべき?


これはイエスです。 シンプルで美しくて High DPI 対応が目的ならサイコーなディストリビューションの1つだと自信を持っていえます。 でも何も考えずに、常に安定した状態で使いたいという人は、High DPI にも対応しているフツーの Ubuntu(ディスプレイ設定でスケール・ファクターを変更可能です)、それか、コッチ(Linux)にはこない方が良いと思います。

でも、もし、あなたが今または将来 Linux テクノロジやオープンソースに興味・触れる機会が多くあり、それらをわざわざ仮想マシンやコンテナを使って動かすのは馬鹿らしいのかも?、と疑問に思ったら勇気を出してこっちの世界に飛び込んでみて下さい。 多少のインピーダンス・ミスマッチはありますが、多分 Elementary OS には満足するはずです。

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Posted by netbuffalo at 20:00│Comments(2)TrackBack(0) Linux | Apple


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この記事へのコメント
Mac歴はかなり長いのですが、エレメンタリー OS 初回起動でつまづきました、プロンプト grubと言うのから進める方法が分からないのです、MacBook Pro Late 2008
Posted by 青木審爾 at 2016年09月14日 05:26
青木さん、ご相談ありがとうございます。

状況としては、インストールは終わったものの、再起動・初回起動するとログイン画面が表示されず、grubプロンプトが表示されたまま先に進まないという状況でしょうか?
(それともインストール自体が始められない?)
前者でしたら、インストールが正常に行われてない可能性があると思います。
僕がインストールした際にもMacBookではグラフィックが崩れたりしましたので、ちょっと難易度が高いかもしれません。
もし、Linux化が目的でしたら一般的なUbuntu 16.04をインストールするのが無難かと思います。
僕もMacBook Pro + Ubuntu 16.04を使っていますがインストールでハマるということは特にありませんでした。
Posted by netbuffalo at 2016年09月14日 17:13

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